労働保険・社会保険における賃金とは・報酬とは
2022.06.14その他
今年も梅雨の季節となりました。
毎年この時期は、労働保険と社会保険の保険料に関する手続きと
して、労働保険の年度更新の申告・納付、社会保険の算定基礎届
の届出を行います(申告・届出は、7月10日が期限です)。
今回は、この、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届の概
要とそれぞれの保険料の計算の基礎となる、賃金・報酬の主な内
容について解説いたします。
1)労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届
①労働保険の年度更新とは
事業主は、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付
と前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付
の手続が必要です。これが「年度更新」の手続です。
労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年
間(これを「保険年度」といいます。)を単位とし、その間
ですべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払
われる賃金の総額に、その事業の種類ごとに定められた保険
料率を乗じて算定します。
②社会保険の算定基礎届とは
健康保険や厚生年金保険の被保険者が実際に支給されている
報酬と既に決められている標準報酬月額(毎月の保険料を計
算する基礎となるもの)が大きくかけはなれないように、毎
年一回、標準報酬月額を決め直して届出することをいいます。
③賃金・報酬について
賃金、給与、各種手当、通勤手当、賞与など名称のいかんを
問わず労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのも
のをいいます。
労働基準法などの労働法では「賃金」、健康保険法などの社
会保険では「報酬」といいますが、基本的な意味は同じです。
2)賃金・報酬に含まれるもの/含まれないもの
①労働保険法での「賃金」の範囲
各法令により、賃金とされるものは下記にあてはまるもので
あるとされます。
・使用者もしくは事業主が労働者に支払うものであること
・労働の対償として支払われるものであること
そのため、それに該当しないものは賃金ではないとされて
います。
賃金とされないものには、
・任意・恩恵的に支払われるもの
・福利厚生として支払われるもの
・実費弁償的なもの
があります。
下記が主な具体例です。
≪賃金とされるもの≫
基本給(固定給)、深夜手当、休日手当、時間外手当、
扶養手当、家族手当、皆勤手当、技術手当、休業手当、
通勤手当、年4回以上の賞与、など
≪賃金とされないもの≫
結婚祝い金、死亡弔慰金、災害・療養・出産見舞金、
退職手当、チップ、出張費、休業補償費、解雇予告手当、
3か月を超える期間ごとの賞与・臨時に支払われる賞与、
など
②社会保険での「報酬」の範囲
標準報酬の算定基準となる「報酬月額」に含まれる報酬の範
囲は、原則として、労働者が自己の労務の対償として受ける
給料(基本給)や諸手当等のすべてとなります。
下記が主な具体例です
≪報酬とされるもの≫
通貨で支給されるもの
基本給、能率給、奨励給、役付手当、特別勤務手当、
家族手当、扶養手当、休職手当、住居手当、
通勤手当、年4回以上の賞与、など
現物で支給されるもの
食事、住宅(寮を含む)、通勤手当に相当する定期券・
回数券、乗車券、自社製品、など
≪報酬とされないもの≫
通貨で支給されるもの
大入袋、病気見舞い金、傷病手当金、解雇予告手当、
結婚祝い金、退職手当、出張費、交際費、慶弔費、
年3回以下の賞与、など
現物で支給されるもの
制服・作業服(業務に要するもの)、見舞い品、
本人負担2/3以上の食事、など
3)年度更新・算定基礎届は適切に申告・届出しましょう
労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届の提出期限が近づ
いています。賃金・報酬についても正しく理解し、手続きは、
適切に実施しましょう。