Q.従業員が通勤途中にケガをした場合、労災保険の対象となるのでしょうか?

2021.12.27安全衛生・健康管理

A.通勤は、労務の提供に当然必要になるものですから、
通勤途中のケガに対しても労災保険が適用されます。
保険給付は、「通勤」の定義に則った通勤行為の途中に
発生した労働災害のみが通勤災害と認定されます。

●通勤の定義

通勤とは、「就業に関し」、以下(1)~(3)の移動を「合理的な
経路及び方法」で行う事を言い、「業務の性質を有するもの」を除きます。
また、移動の経路を「逸脱」し、または移動を「中断」した場合は、
通勤とみなされません。

(1)住居と就業場所との間の往復
(2)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動
(3)就業場所から他の就業場所への移動

●通勤の解釈について

①「就業に関し」とは

移動行為が業務と密接な関連をもって行われる事を言います。
例えば、通勤災害発生日に就業する事となっていた、
または、実際に就業していた事が必要です。
遅刻や通勤ラッシュを避ける為の早出など、通常の出勤時刻と
ある程度の前後があっても就業との関連性は認められます。

②「合理的な経路及び方法」とは

一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法を言います。
合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、
複数あったとしても、合理的な経路と認められます。
当日の交通事情により、やむを得ず迂回してとる経路も
合理的な経路となります。

合理的な方法については、公共交通機関や自動車、徒歩など一般に労働者が
用いられる方法を言い、普段用いている通勤方法かどうかに係わらず
合理的な方法となります。

通勤経路を確認する為、入社時に社員から通勤経路届を提出してもらいます。
変更があった際には再提出が必須です。

③「業務の性質を有するもの」とは

具体的には、住居から直接顧客先に向かう場合や
緊急の為、休日に呼出しを受けて出動する場合などが該当し、
上記のような移動は業務災害となります。

●通勤の対象となる移動について

(1)「住居」と「就業場所」との間の往復

①「住居」とは

労働者が日常生活を行う場所を言います。
就業の必要上、労働者が家族の住む場所とは別にアパートを借り、
そこから通勤している場合には、そこが住居となります。

②「就業の場所」とは

業務の開始または終了する場所を言い、会議・研修の会場や、
会社が行う行事の会場なども就業の場所となります。

(2)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

転居をともなう転勤にて、やむを得ない事情により、
以下の者と別居する事となった移動を言います。

①配偶者
②子(配偶者がいない場合に限る)
③父母または親族であって、要介護状態にあり、かつ当該労働者が
介護をしていたもの(配偶者や子がいない場合に限る)

(3)就業場所から他の就業場所への移動

副業などで複数の異なる事業場で働く労働者については、
1つ目の就業の場所での勤務が終了した後に、
2つ目の就業の場所へ向かう移動を言います。

●逸脱・中断とは

「逸脱」とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で、
合理的な経路を逸れる事を言い、「中断」とは、通勤の経路上で
通勤と関係ない行為を行う事を言います。

通勤の途中で逸脱または中断があると、その後は原則として通勤とはなりません。

例外として、日常生活上必要な行為を最小限度の範囲で行う場合には、
逸脱または中断の間を除き、
合理的な経路に復した後は再び通勤となります。

逸脱、中断の例外となる行為は以下になります。

①日用品の購入
②職業訓練などの受講
③選挙の投票
④病院への受診
⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および
兄弟姉妹並びに配偶者の父母を、継続的または反復的に行う介護

●通勤災害で受けられる保険給付

①療養給付

労災指定病院で治療を受けた場合、「療養補償給付たる療養の
給付請求書(様式第16号の3)」を提出すると、労働者は
自己負担なく治療を受ける事が可能です。

治療を受けた医療機関が労災保険指定医療機関でない場合には、
一旦療養費を立て替えて支払い、その後、「療養補償給付たる療養の
費用請求書(様式第16号の5」を労働基準監督署長に提出する事で、
立て替えた費用が戻ってきます。

②休業給付

労働災害により休業した場合には、休業4日目以降から
給付基礎日額の6割と、社会復帰支援として給付基礎日額の
2割が支給されます。
療養給付を受ける場合には、一部負担金として初回の休業給付から
200円が控除されます。
休業給付を請求する場合、労働基準監督署へ
「休業補償給付支給請求書(様式第16号の6)」を提出します。

③その他の保険給付

①②の他にも「障害給付」、「遺族給付」、「葬祭給付」、
「傷病給付」「介護給付」などの保険給付があります。
これらの保険給付についても労働基準監督署長に、
所定の請求書を提出する事となります。

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