Q.わが社は季節によって繁閑の差がある業種です。1年単位の変形労働時間制の 導入を検討していますが注意点を教えてください。
2021.06.25労働時間と休日
A. 1年単位の変形労働時間制は会社にとって融通のきく一方、従業員に
長期間負担を強いることにもなりかねません。そのため、導入する
際には、しっかりしたルールを定める必要があります。
≪1年単位の変形労働時間制とは≫
1ヶ月を超えて1年以内の一定期に労働時間の多い時期と少ない時期
を設定する制度です。シフト表・カレンダー通りの勤務であれば、
法定労働時間の1日8時間および1週間40時間を超えて労働しても
割増賃金が発生しないというものです。
≪導入時の注意点≫
1年を通じて具体的な繁閑状況があらかじめ確定していることが
制度を導入する前提です。シフト表・カレンダーで設定した
1日と1週間の時間を超えて労働させた場合は割増賃金が発生します。
また、原則、一度組んだシフト表・カレンダーを途中で変えることは
できません。
≪1年単位の変形労働時間制導入の流れ≫
① シフト表・カレンダーの作成
1年間の法定労働時間は次の式で求められ、総労働時間が
2085.6時間におさまるように作成します。
1年(365日)の法定労働時間=週法定労働時間×年間の週の数
=40時間×52.14…週(365日÷7日)=2085.6時間
シフト表・カレンダーで休日と労働日、労働時間を定め従業員に
周知しなければなりません。
【カレンダーを作る際の注意点】
長期間に渡り、従業員に長時間労働をさせないため、カレンダー
には以下の制限があります。
〇労働日数の上限=280日(対象期間が1年の場合)
〇労働時間の上限=1日10時間、1週間52時間、1年2085.6時間
・1週48時間超の労働時間は連続3回以下であること
・1週48時間超の労働時間は3か月間ごとに3回まで
〇連続労働日数の上限=6日間 ただし、労使協定で
特に忙しい時期「特定期間」を定めれば、連続
労働日数を最長12日までとすることが可能です。
② 就業規則の変更と労使協定を締結
就業規則に変形労働時間制を導入している旨を記載します。
労使協定には、対象労働者の範囲、起算日、所定労働時間を
定めなければなりません。
③ 時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)を締結
シフト表・カレンダーで定義した時間を超えた時間外労働に
備えて36協定を締結しなければなりません。
④ ①~③を労働基準監督署に届出する。
シフト表・カレンダー、労使協定、36協定および変更後の就業規則
(常時10人以上雇用する事業場は届出義務あり)をあわせて管轄の
労働基準監督署に届出しなければなりません。