【働き方改革シリーズ第6回】産業医の選任

2021.02.25法改正

 今回は働き方改革シリーズ最終回
 「産業医の選任義務」について解説いたします。

 ┏────────────────────────────────────┓

  Q.産業医の選任義務と、役割について教えてください。
    また、今回の改革法案の中で強化されたことは
  どんなことですか。

 ┗────────────────────────────────────┛

A.労働者が50人以上の事業場では、産業医の選任が法律で義務付けられています。
(1)産業医とは
労働者の健康保持のために、専門的な立場から労働者や事業者に対して
指導や助言をする医師のことです。
50人以上の事業場においては、産業医を選任し、労働者の健康管理を
行わせる必要があります。
・労働者の人数にはパートアルバイトを含む
・事業場とは本社、支店、営業所、店舗ごと

(2)産業医の立場
産業医は、安全管理者や衛生管理者、衛生委員会と異なり、
総括安全衛生管理者の指揮・命令下には入りません。
労働安全衛生法の規定により、産業医は中立的な立場から
労働者の健康確保のために必要と認められるときは、
事業者に対して直接勧告することが可能とされています。
事業者は、産業医からの勧告を衛生委員会または安全衛生委員会に報告し、
措置の内容の記録を3年間保存することが義務付けられています。

(3)産業医の役割
・健康診断の実地や、結果に基づく措置
・長時間労働をしている労働者に対する面接指導、結果に基づく措置
・ストレスチェックと高ストレス者に対する面接指導、結果に基づく措置
・労働者の健康保持のため、作業環境の維持管理と作業管理
・労働者への健康教育、健康相談など、労働者の健康の保持増進を図るための措置、衛生教育
・労働者の健康障害の調査、再発防止のための措置
産業医は少なくとも毎月1回は作業場などを巡視し、作業方法や衛生状態に
有害のおそれがあると判断される場合は、直ちに労働者の健康障害を防止するための
必要な措置を講じなければならないと規定しています。

働き方改革(2019年4月1日施行)にともない強化された産業医の機能
・産業医への情報提供の強化と事業主の努力義務
事業者は、産業医が労働者の健康管理を適切に行うために、
産業医に報告する義務が生じる。また、事業者は労働者が安心して
産業医による健康相談を受信できる環境を構築する努力義務と
産業医の業務内容を労働者に周知する義務があります。

・事業者が産業医に報告する義務がある事項
1か月あたりの時間外、休日労働時間が80時間を超えた長時間労働者の状況
産業医が健康管理を行うために必要と認める労働者の業務内容に関する情報
健康診断や面接指導を実施したあとの労働者に対する事業者からの措置

・産業医による面接指導の強化
1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えて、1か月あたりの時間外労働時間が
100時間以上の場合、労働者から希望がある場合は、産業医と面接を行うことができます。
労働者の身体的健康の管理はもちろんのこと、メンタルヘルスの悪化や過労死のリスクを
見逃さないようにすることが目的です。

・産業医を選任しなかった際の罰則
労働安全衛生法 第120条第1号の規定により、産業医を選任しなければならない事由が
あるのにもかかわらずそれを怠った事業者には、50万円以下の罰金が科されます。

MKマガジン一覧へ戻る