【働き方改革シリーズ第3回】年次有給休暇の年5日取得義務
2021.01.13法改正
今回は働き方改革シリーズ第3回
「年次有給休暇の年5日取得義務」について解説いたします。
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Q.当社では自発的に有給休暇を取る社員が少なく、
取得状況の管理体制も整っていません。
年5日の取得義務を達成するためにはどうような方法がありますか。
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A.年次有給休暇の管理簿を作成したうえで、
計画年休制度を活用する等して年次有給休暇の消化率を上げましょう。
■年次有給休暇の年5日取得義務とは
労働基準法では、労働者の心身のリフレッシュを図ることを
目的として、労働者に毎年一定の日数の年次有給休暇を与える
ことを規定しています。
しかし、その取得率は令和2年までに70%が目標のところ令和元年の
調査では56.3%に留まっています。
そこで、2019年4月の法改正により年10日以上の年次有給休暇が
付与される労働者に対し、年次有給休暇を付与した日を基準日として、
1年以内に5日について使用者が時季を指定して与えることが義務化
されました。
この対象者には管理監督者やパートタイム労働者も含まれます。
週の所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の
短時間勤務者についても、数年の勤務ののち10日の有給休暇が付与
され、年5日取得の対象者となります。
また、使用者は有給休暇の管理簿を作成し、取得時季・日数・基準日
を労働者毎に明らかにした上で、5年(当分の間3年)保存しなければ
なりません。
管理簿の形式は、労働者名簿や賃金台帳に必要事項を盛り込んだり、
管理システムに記録していくといった方法が挙げられます。
さらに、就業規則に時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の
方法について明記しなければならないことについても定められています。
なお、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に
ついては、使用者による時季指定の必要はありません。
■罰則について
年5日の有給休暇を取得させなかった場合、
労働者1人につき30万円以下の罰金に処せられます。
つまり、対象となる労働者が10人いれば、300万円以下の罰金を課せられる
ということです。
確実に年5日の有給休暇の付与を達成できるよう、
労働者ひとりひとりの取得状況を確認できるようにしましょう。
■計画年休制度について
年次有給休暇ののうち、5日を超える部分は、労使協定を結ぶことで
使用者があらかじめ時季を指定して取得させることができます。
これが計画年休制度です。
例えば、
・会社全体で年末年始やお盆休みの連休を増やすなど、
全社員が同時に特定の日を有給休暇とする。
・従業員をグループに分けてそれぞれ有給休暇の日にちを指定する。
といった方法で有給休暇を与えることが出来ます。
計画的に有給休暇付与のスケジュールがたてられるため、
有給休暇の取得状況の管理がしやすいというメリットがあります。
一方で、事業所全体の休業による計画年休の一斉付与の際に、
年休権が無い労働者や、年休日数の少ない労働者に対しては、
特別の休暇を与えたり、年休の日数を増やす等の措置が必要です。
このような措置をとらずに休業させる場合は、休業手当の支払い
(平均賃金の100分の60以上)が必要となりますのでご注意ください。