Q.2019年4月に医師による面接指導の対象となる労働者について改正がありましたが、事業主は、どのような労働者を対象に行わなければならないでしょうか。
2020.10.15安全衛生・健康管理
A.
労働者の健康管理のための産業医の環境整備や、労働者
に対する健康相談の体制整備を目的とした法改正が
2019年4月に行われました。
事業主は、1ヶ月あたりの時間外・休日労働が80時間を超え、
かつ疲労蓄積がある労働者本人が申し出た場合、
医師による面接指導の機会を与えなければなりません。
また、事業主は以下のような流れで、医師による面接指導を
行わなければなりません。
(1)労働時間の状況の把握
(2)労働時間の通知・面接指導受診の指示
(3)医師からの意見聴取・事後措置
(4)面接指導の結果の記録
■面接指導の目的
長時間労働により疲労が蓄積し、
健康障害を発症するリスクの高い労働者に対し、
その健康状態を把握し、その結果を踏まえた措置を講ずることです。
近年、労働者の過労死やメンタルヘルス疾患が問題視されています。
労働者災害補償保険法の、過労死の認定においては、時間外労働
が重要な指標となっており、
発症前1か月間に100時間または
発症前2か月~6か月前にわたり、1か月あたり概ね80時間を超える
時間外労働が認められる場合、
業務と発症との関連性が強いと評価されます。
過労死に係る訴訟において会社に問われる責任は大きく、
社会的な会社のイメージも大きく損なわれます。
労働者の就業状況や心身の健康状態をしっかりと把握し、
適切な措置をとることが、従業員はもちろん、
会社を守ることに繋がります。
この機会に改めて面接指導の流れを確認し、
社内の体制を整えましょう。
なお、面接指導を行う医師は、産業医の資格を持つ方が望ましいですが、
会社と提携のある産業医が居ない場合は、地域産業保健センターにて
面接指導のサービスを受けることが出来ます。
ぜひお近くの地域産業保健センターにお問合せください。
■面接指導の流れ
(1)労働時間の状況の把握
労働者の労働日ごとの始業・終業時間を記録します。
この記録の方法はタイムカードや勤怠管理システムなどを用いた
客観的な方法で行います。
この記録は3年間の保管義務があります。
(2)労働時間の通知・面接指導受診の指示
時間外・休日労働時間が80時間を超えた労働者に対し、
労働時間に関する通知を行わなければなりません。
産業医が居る場合は、産業医に対しても通知義務があります。
(3)医師からの意見聴取・事後措置
面接指導の結果に基づき、労働者の健康保持のため必要な措置について
医師の意見を聴かなければなりません。
また、この意見を勘案して、
・就業場所の変更・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少
など必要な措置を講じなければなりません。
(4)面接指導の結果の記録
面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存しなければなりません。
面接指導の情報は、個人情報に該当しますので、
労働者本人の合意をもって、慎重に取り扱ってください。