Q.部下に対し、「バカ」「給与泥棒」「お前」等の言葉で、感情任せに怒鳴り叱責をする上司がいます。厳しく指導をするためだとは思いますが、パワハラとの境界線の基準を教えて頂けますか?
2020.10.15服務規程
A.客観的に見て、業務上必要な言動かどうかが焦点です。
「バカ」「給与泥棒」といった人格を否定する
ような発言は、業務上必要な範囲を超えており、
パワハラとなります。
「お前」という言葉は、例えば、普段から、
部下全員に対し、男女、年齢の差がなく使っており、
口は悪くとも、愛情深い上司であって、部下が大して
不快に感じないといった事情も考えられますが、
一般的には、注意が必要な言葉でしょう。
○パワハラとは
法改正により、職場におけるパワーハラスメント
の定義が「優越的な関係を背景とした言動であって、
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
労働者の職業環境が害されるもの(身体的、精神的な
苦痛を与えること)」と明文化されました。
上司は部下に対して、注意している、教育している
つもりでも、部下は「パワハラを受けた」と感じる
ことがあります。
これに対し、「客観的にみて、業務上必要かつ
相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、
職場におけるパワーハラスメントには該当しない」
という指針も公表されております。
この線引きを会社組織全体で共有することが
なにより大切です。
○パワーハラスメントを予防するための措置
1.方針を明確にして、周知、啓発を行いましょう。
どのような行為がパワハラになるかを具体的に
示し、またパワハラが実際に起こった場合には、
厳正に対処することを研修等で社員へ伝えます。
また、就業規則や、服務規律に明文化し、
違反した場合に、どのような懲戒処分を受ける
のかを規定しておきましょう。
就業規則等に規定していない場合には、
原則として、懲戒処分は認められません。
2.相談窓口を設置しなければなりません。
改正法では、「パワハラの相談窓口を設置し、
労働者に周知すること」を義務としています。
就業規則等に、「相談窓口を設置している旨」を
明記し、その相談窓口が誰であるかを全体会議や、
社内掲示板で、周知しておくことが必要です。
○ハラスメントの相談を受けたら
事実が曖昧なケースが多いと思いますので、
5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、何のために、
どうしたか)を特定することが先決です。
また、行為者の多くは、事情聴取の途中で、
「納得できない」「怒りが収まらない」状態に
なりますので、面談後すぐに、部下を呼び出して
恫喝するケースも考えられます。そのような
報復行為は絶対に行わないように念押しをします。
具体的な事件内容は明かさず、社内研修を開催し、
行為者自身に気づいてもらう方法もあります。
ハラスメントがないから良い会社とは限りませんが、
良い会社はハラスメントをなくす努力をしているとは
いえるでしょう。また、大切な社員が辞めることは、
企業にとっても、社員にとっても、大きなマイナスです。