Q.定年後、再雇用契約を結んだ嘱託社員より「嘱託社員になってから、業務内容は変わらないのに精皆勤手当が支給されなくなったのはなぜですか。説明をしてください。」と言われました。手当を支払う必要はあるのでしょうか。
2020.01.16賃金
A.精皆勤手当を支払わなければ不合理とされた判例があります。
質問を受けた嘱託社員の方と正社員の働き方が同様ならば、
精皆勤手当の支給が必要になる可能性があります。
また、質問を受けた嘱託社員に対して、
精皆勤手当を支給しない理由の説明が必要になります。
1.最近の裁判例
「精皆勤手当(従業員に対し、休日以外は一日も欠かさずに
出勤することを奨励する趣旨で支給するもの)」について、
「正社員と嘱託社員とで皆勤を奨励する必要性は異なるもので
はない」として、待遇差を不合理とした判決があります。
(2018.6.1最高裁判決)
判例をもとに世の中の全ての「精皆勤手当」について、
同一労働同一賃金に違反するとは言えませんが、
今後の人事制度に、重要な影響を与えています。
2.注意しなければならない給与体系と賃金項目
厚生労働省から、基本給、昇給、賞与、各種手当に
関するガイドラインが発表されています。
下記リーフレットをご参照ください。
(https://bit.ly/2lToNdP)
3.就業規則や給与規程の見直し
同一労働同一賃金の法改正にあたって、
事前準備が必要です。均衡待遇、均等待遇にそぐわないと
考えられる項目を特定し、見直しを行いましょう。
厚労省からは以下の手順が紹介されています。
(1)労働者の雇用形態を確認しましょう。
正社員以外の勤務パターンはいくつあるでしょうか。
(どのような業務、役割、責任を担うか。)
(2)正社員と待遇が異なる点を書き出しましょう。
(賃金項目、教育訓練項目、福利厚生項目等)
(3)待遇が異なる場合に、その理由を書き出し、
合理的に説明ができるように整理しておきましょう。
(4)現状の制度に問題がみられる場合は、
計画を立てて取り組みましょう。
4.不利益変更
待遇差を見直した結果、手当の廃止等を余儀なく
される場合もあります。
労働条件の不利益変更を行う場合には、対象の
労働者の合意が必要です。併せて、就業規則の
変更も行う場合には、その程度に応じて、
社員へ向けて、合理的な説明が必要になります。
正しい手順を踏まないような一方的な変更は、
無効とされ、遡って変更前の有利な労働条件が
適用されてしまう可能性もありますので、
慎重かつ計画的に進めましょう。