Q.労働保険の申告のため、賃金を集計しています。社長の報酬は、集計対象になりますでしょうか?

2020.01.16賃金

A.社長の報酬は集計対象になりません。
社長と同居の家族についても同様に扱われます。

労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の二つを
合わせた呼び方です。

「労災保険」とは、業務上と通勤における病気、けが、
障害、死亡に関しての給付が受けられる制度です。

労働基準法では、労働者が業務上ケガをした場合には、
会社が負担をして補償すべきとされています。
しかし、補償額は多額になる場合が多く、その補償額
を支払える財務基盤を持つ会社は少ないと言えます。

そこで生まれた国の公的な保険制度が「労災保険」
であり、労災保険料は全額を会社が負担します。

「雇用保険」とは、労働者が失業した場合や、
育児や介護で雇用の継続が困難な場合、職業に関する
教育訓練を受けた場合に、生活保障として給付が
受けられる制度です。
雇用保険料の一部は、労働者も負担します。

毎年度、それぞれの対象者の賃金を集計し、
保険料率を掛けて計算した労働保険料を納付します。

「雇用保険」の対象者は、そのまま「雇用保険の
被保険者」が対象となりますので、普段、入退者の
届出事務をされている総務担当者の方等であれば、
よく理解されているかと思いますので、今回は解説
を省略します。

一方、「労災保険」の対象者は、日々あまり意識
していない為、間違いやすいポイントですので、
以下に解説致します。

●基本的な考え方●
常用、日雇、パート、アルバイト、派遣等の名称や、
雇用形態にかかわらず、労働の対象として賃金を
受けるすべての者が対象となります。
つまり、勤務時間が短く、雇用保険の被保険者に
ならない方も労災保険の対象になります。

〇役員の取り扱い〇
代表権・業務執行権を有する役員は、原則として
労災保険の対象となりません。

法人の取締役等であっても、使用人兼務役員であり、
事実上、指揮監督を受けて労働に従事していれば、
その使用人分の賃金は、労災保険の対象となります。

〇事業主と同居の親族の取り扱い〇
事業主と同居している親族は、原則として
労災保険の対象となりません。

例外として、一般事務や現場作業等に従事し、
かつ、次の条件を満たすものについては、
一般の労働者と同様に労災保険の対象者となります。

1.就労の実態が、他の一般の労働者と同様であり、
賃金も同様に支払われていること。

2.業務を行うにつき、事業主の指揮命令に
従っていることが明確であること。

〇出向労働者の取り扱い〇
出向先において、労災保険の対象となります。

〇派遣労働者の取り扱い〇
派遣元において、労災保険の対象となります。

また、建設業や林業等については、請負金額等
から対象賃金を集計する場合がありますので、
労働保険の計算方法が異なります。

「労災保険」「雇用保険」それぞれ正しく集計し、
適正な保険料を納付しましょう。

MKマガジン一覧へ戻る