Q.社員から「住宅ローン返済のため、貸付をしてもらえないか」と申出がありました。貸付をし、毎月の給与や、賞与から返済してもらおうと考えています。何か注意点があれば教えて下さい。
2020.01.16賃金
A.賃金から返済額を控除するため、労使協定を
結ぶ必要があります。その際に、返済額を
全額返金するまでは退職を認めないなどの
条件を定めることはできません。
労働関係と金銭の貸し借りの関係を完全に
分離する必要があります。
【前借金の禁止】
労働基準法17条では、
「使用者は、前借金その他労働することを条件と
する前貸の債権と賃金を相殺してはならない」
と規程しています。
前借金とは、労働契約の締結の際に、
労働することを条件として、使用者から借り入れ、
将来の賃金により弁済することを保証する金銭を言います。
これは、社員を一定期間拘束するような内容であるため、
前借金に該当する金銭の貸借は禁止となっております。
この労働基準法の内容は、
会社からの一方的な金銭の相殺は禁止ということです。
社員からの希望や、了解があれば問題はありません。
上記の内容を踏まえて、
労使協定を結ぶ際の注意点として、以下の4点が考えられます。
1.その貸付が社員の便宜のためであるか。
2.社員からの申し出に基づくものであるか。
3.返済金額は、月例賃金や賞与、退職金等の充当によって
生活を脅かすようなおそれのない程度に返済し得るものであるか。
4.返済前であっても退職の自由が制約されていないことなど、
身体的な拘束を伴っていないか。
会社と社員間の金銭の貸借は、トラブルになる
可能性があるため、金銭消費貸借契約等の書面をしっかり
取り交わしておく必要があります。