Q. コロナ渦で、体調を崩し休職する人が増えていると耳にします。自社の休職規程に、問題がないか見直したいと考えています。見直すポイントを教えてください。

2021.08.10休職・復職

A. 休職規程に不備があると、お互いの認識のずれから
労務トラブルに発展する恐れがあります。
具体的には、休職の期間や休職中の保険料の支払いの有無、
復職後の処遇等があります。
認識の相違を避ける為にも、しっかりとした休職規程を
就業規則に定める必要があります。

具体的なポイントは以下に記載致します。

●休職規程に定める事項

休職規程には、私傷病による休職について定めます。

主に以下の事について定める必要があります。
①休職の開始時期
②休職期間
③休職の通算期間の限度
④休職中の賃金など
⑤復職の条件
⑥休職後の退職について

※復職に関しては、次号のエムケー人事マガジンにて説明致します。

業務上の災害により休業する場合は、法律上解雇制限がかかる為、
会社の休職制度には該当しません。

●休職を命ずる際のポイント

休職の判断は、会社側に全面的に裁量があるようにする事がポイントです。
次の2つの表現は、どちらに会社の裁量権があるでしょうか。

(1)「業務外の私傷病により、~就業ができない場合に
休職を命じます。」

(2)「業務外の私傷病により、~就業ができない場合に
休職を命じる事があります。」

(1)は休職を「命じる」と断言する事で、会社に裁量があるように
感じられますが、「従業員が業務外の傷病で働けない場合に、
必ず休職を命じなければならない」と受け取る事ができ、
会社の裁量を狭めています。

(2)は「会社は業務外の傷病で働けない場合、休職を命じない事もある」
と示唆し、休職以外の選択肢を示す事もできるとしています。

●休職の開始時期について

欠勤の最初の日から休職扱いとはせず、1か月程度様子を見てから
休職にするのが一般的です。

また、開始日が示されないと、休職期間の終了日も確定しません。
休職の開始については細かく定める事が必要です。
例えば、「私傷病により欠勤し、暦日で30日を経過しても就労ができないとき」、
「私傷病により欠勤・遅刻・早退等があり、直近の暦日90日間のうち
所定労働日数の3分の1を超えるとき」などとします。

●休職期間について

休職期間は、法律で決められているものではない為、
会社が任意で就業規則に期間を定める事ができます。
勤続年数に応じて休職期間を設ける事が一般的です。

例えば、「勤続年数1年未満は休職期間無し」、
「1年以上5年未満は3か月以内」、「5年以上は6か月以内」などとし、
会社の状況に応じて、無理に長期期間とする必要はありません。

休職期間が満了したものの、復職が難しい場合には、
原則、自然退職となります。
●休職期間の通算について

病気が再発した際の通算期間の限度についても記載する必要があります。

近年急増しているうつ病などのメンタルヘルス不調は再発率が高く、
休職と復職を繰り返すという事がよくあります。
休職の通算期間の限度を規定しなければ、休職が
長期間になってしまう可能性があります。

具体的には「異なる傷病等により休職が複数回に及ぶ場合でも、
休職期間を通算して6か月を経過する事はできません。」などとします。

●休職期間中の賃金について

休職中はノーワークノーペイの原則から支払い義務がなくなります。
従業員は、健康保険から傷病手当金を最大1年6か月受給できます。
在職中の被保険者期間が1年以上あれば退職後も受給が可能です。

また、休職中も社会保険料の支払いは免除されないので注意が必要です。
休職中は、給与からの天引きができないので、休職を命ずる前に、
従業員と社会保険料の徴収方法について取り決める必要があります。

●休職時に取り交わす書面

【休職願】
本人から医師の診断書を添えて提出してもらいます。

【休職命令書】
休職願を受け取ったあと、休職期間の取り扱いについて
記載した「命令書」を本人に通知します。

【休職に関する誓約書】
休職にあたり、守るべき事を誓約させます。

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