Q.2022年4月より、育児休業等の法律が変わりますが、当社は育児期の社員が不在ですが、必要な対応があれば教えていただけないでしょうか。

2022.04.25その他

  A.育児休業を取得見込みのある社員がいない場合でも、
   すべての事業主が雇用環境の整備をする義務があります。

  2022年4月から、雇用環境の整備をする義務となる事業主が講ずべき措置は
  以下の3点です。
  
  (1)育児休業(以下、育休といいます)を取得しやすい雇用環境整備
  (2)妊娠・出産の申出をした社員に対する個別の周知・意向確認
  (3)有期雇用社員の育児・介護休業取得要件の緩和

  具体的に見て行きましょう。

  〇育休を取得しやすい雇用環境整備
   以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
   ①育休についての研修の実施
   ②育休に関する相談体制の整備(相談窓口の設置等)
   ③自社の社員の育休取得事例の収集と提供
   ④自社の社員への育休制度と育休取得促進に関する方針の周知

   複数の実施が望ましいですが、
   最も実施しやすいのは、②の相談窓口の設置です。
   既に義務化されているセクハラ、パワハラ等の相談窓口と併せて担当者を決め、
   就業規則に記載し周知します。ただし、形式的に担当を設けるだけではなく、
   社員が相談しやすい体制を作り、実際に対応可能な窓口とすることが重要です。
   相談窓口を複数人としたり、相談受付時間や受付方法(面談、電話、メール等)も
   具体的に定めておくと、より相談しやすくなります。

  〇社員への個別の周知・意向確認
   本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た社員に対して、
   以下の全てを個別に周知し、意向確認しなくてはなりません。
   (2022年4月1日以降に申し出た社員が対象です)
   ①育休に関する制度(制度の内容等)
   ②育休の申出先(人事課、総務課等)
   ③雇用保険の育休給付に関すること(制度の内容等)
   ④社員が育休期間中に負担すべき社会保険料の取り扱い

   周知方法としては、面談、書面交付、FAX、メールとされており、
   FAXやメールは社員が希望した場合のみに可能です。
   記録を出力する等して書面を作成できる方法に限りますが、
   LINEやSNSのメッセンジャー等による送信も認められるものと考えられます。
   社員の具体的な意向を把握することまでを求められている訳ではなく、
   意向確認のための働き掛けを行えば良いとされています。

   男性でも、健康保険の扶養の申請などで配偶者の出産を知る事ができますので、
   その際には育休が取れることを説明し、意向確認をしましょう。
   また育休を取らないよう威圧したり、申し出た場合の不利益をほのめかしたり、
   育休取得を控えさせるような言動はマタニティハラスメントとなりますので
   注意が必要です。

  〇有期雇用社員の要件緩和
   有期雇用社員の育休取得要件であった
   「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上の者」が廃止されます。
   (労使協定を締結すれば、適用除外とする事は可能です)
   就業規則のその旨の定めについて、記載を削除し周知する必要があります。
   なお、この点は介護休業についても同様の措置が必要です。

  今回の改正は、2022年10月に予定されている育休制度の大幅な改正に向けた
  雇用環境整備が主な目的です。
  
  東京都では、男性に育休を取得させた企業に支給する奨励金制度もありますので、
  これまで育休取得の前例のない会社でも、取り組みましょう。

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