Q.従業員が業務中にケガをした場合、労災保険を適用して受診するには何を準備するべきでしょうか。また、労災保険給付の内容を教えて下さい。
2021.12.10安全衛生・健康管理
A.業務上のケガの場合、「労災病院」もしくは
「労災指定病院」に受診します。
後日「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を
提出する事で従業員は、自己負担なく治療を受ける事が可能です。
現場の近くに労災病院等がない場合、いったんは近くの病院で
受診をし、改めて労災病院等に受診する事をお勧めします。
●労災保険とは
労働者の業務中や通勤途中に起きたケガ・病気・障害、
あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。
正しくは、労働者災害補償保険といい、
労働者やその遺族の生活を守る為の社会保険です。
ここでの労働者とは、会社に雇われている正社員だけでなく、
パートタイマーやアルバイトも含みます。
●労災の対象について
「業務災害」と「通勤災害」に分かれます。
(1)業務災害
業務上でのケガや病気、障害や死亡を言います。
この「業務上」とは、この労働災害は、
①仕事中に(業務遂行性)②仕事が原因で発生(業務起因性)
という2つの条件を満たしていないといけません。
「業務遂行性」とは、ケガをした労働者が、会社(事業主)の
支配下・管理下にある事を言います。
「業務起因性」とは、負傷や疾病が仕事に起因して生じたもの
である事を言います。
労災保険の保険給付を受ける事ができるかの基準は
「業務遂行性」と「業務起因性」の2つです。
この判断は会社がするのではなく、労働基準監督署が行います。
業務中のケガであっても、業務に関係のない私的な行為に
起因するケガや、故意によるケガなどは労災に該当しません。
②通勤災害
労働者が家と職場との往復時など、所定の移動中のケガや
病気、障害や死亡などを言います。
通勤災害については次号にて詳しく説明いたします。
●労災保険で受けられる給付
①療養補償給付
「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を提出すると、
請求書は医療機関を経由して労働基準監督署長に提出されます。
請求書を提出する事で、自己負担なく治療を受ける事が可能です。
療養した医療機関が労災保険指定医療機関でない場合には、
一旦療養費を立て替えて支払い、その後、「療養補償給付たる療養の
費用請求書(様式第7号)」を労働基準監督署長に提出する事で、
立て替えた費用が戻ってきます。
②休業補償給付
労働災害により休業した場合には、休業4日目より給付基礎日額の6割が、
休業した日数分だけ給付されます。
加え、休業特別給付金と呼ばれる制度があり、社会復帰支援として
休業1日につき、給付基礎日額の2割が支給されます。
合計で給付基礎日額の8割にあたる額の補償を受ける事が可能です。
休業補償給付を請求する場合、労働基準監督署へ
「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を提出します。
③その他の保険給付
①②の他にも「障害補償給付」、「遺族補償給付」、「葬祭料」、
「傷病補償年金及び介護補償給付」などの保険給付があります。
これらの保険給付についてもそれぞれ、労働基準監督署長に請求書などを
提出する事となります。
●事業主責任について
本来、労働者の業務起因性のケガや病気は、会社が療養補償や休業補償、
その他補償を行う義務があります。
労働者が補償を受けられないような事が起きないよう、
労災保険で労働者を保護しています。
その為、会社が1人でも労働者を雇用する場合には、
労災保険への加入が義務付けられています。
しかし、労災保険で補償されるのには限度額があり、
それ以上の補償が必要な場合、会社に支払い義務が発生します。
民間の「労働災害総合保険」という保険があります。
一般的には「労災上乗せ保険」と言い、政府労災では
賄いきれない部分をカバーする事が可能です。
労災上乗せ保険については以下に資料を添付します。