Q. 正当な理由なく遅刻、無断欠勤を繰り返す社員がいます。会社としてどのような処分が適切でしょうか。また、処分の方法はどのようなものがありますか?

2020.10.26懲戒・解雇

A.従業員が就業規則に違反したことに対して罰する行為を「懲戒処分」と言います。

  一般的に懲戒処分には7つの方法があります。

 1.戒告(かいこく)
  口頭又は文書で、改善するように将来を戒め反省を促します。

 2.譴責(けんせき)
  始末書を提出させます。1の戒告より強く、改善するように将来を戒め
  反省を促します。

 3.減給
  始末書を提出させ、給与から一定額を差し引き反省を促します。
  但し、減給の額は労働基準法で上限が決められています。
  a.平均賃金の1日の半額を超えない額、かつ
  b.総額が1回の賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えない額

 4.出勤停止
  始末書を提出させ、一定期間(1週間~2週間程度)出勤を停止する処分です。
  出勤停止期間は賃金を支給しないことで反省を促します。

 5.降給・降格
  職務・職種の変更、等級の引き下げ、役職の解任を行い、
  給与を減額させることで反省を促します。

 6.諭旨解雇
  いわゆる退職勧奨と言われる処分です。
  7の懲戒解雇より一段軽い懲戒処分で、労働者に自分の意思で
  退職届を提出するように勧告する処分です。
  従わない場合は、7の懲戒解雇とする場合があります。

 7.懲戒解雇
  制裁の中で最も重い処分です。一方的に労働契約を解消する処分です。
  労働基準監督署の認定を受けなければ、通常の解雇の手順と同じように
  30日前の解雇予告、あるいは平均賃金30日分以上の予告手当が必要となります。

 順番に従い重い処分となります。

 懲戒処分を実際に行うにあたり、以下の点を踏まえて
 どの懲戒処分にするのか検討する必要があります。

 1)重すぎる懲戒処分はできない。
  違反行為と懲戒処分の種類・程度のバランスが取れていないと
  懲戒処分が無効になるケースがあります。
  まずは、軽度なものから実施し、改善しない場合処分を重くしていくという
  運用が安全です。

 2)不公平な処分はできない。
  同じ違反行為に対しては、特別な理由がない限り、
  同じ種類・程度の処分にしないといけません。
  ただ、本人の反省度合いや落ち度も多様ですので、
  場合によっては公平という意味で、処分に差をつけることも可能です。

 3)就業規則に記載のある行為に対して懲戒処分ができる。
  基本的に懲戒処分を行う場合は、就業規則にのっとり制裁を与える必要があります。
  特に上記3~7の処分については、処分が重いため、就業規則に記載がない場合は、
  社員から反発され、無効になる可能性があります。
  そのため、就業規則には懲戒事由をきちんと明記しておきましょう。

 4)懲戒処分の記録を残すこと。
 記録は書面で残すことをお勧めいたします。
 懲戒処分後に、社員からの申し出や、弁護士をつけて
 処分の変更や、無効を訴えてくる可能性があります。
 その際に、口頭のみの記録では、反論の余地がなく、
 無効になってしまうケースがあります。
 そのため、処分の記録はきちんと残すようにしましょう。

 事例:正当な理由なく遅刻、無断欠勤などの違反行為を
    繰り返す社員への懲戒処分の流れ

 1.口頭で指導する。       (指導記録に記録する。)

 2.業務改善指導書にて指導する。 2.3回 (指導記録に記録する。)

 3.始末書を提出させる。     (指導記録に記録する。)

 ここまでしても、違反行為を繰り返す、反省がない、反抗的などの場合は
 3.減給、4.出勤停止、5.降格・降給、6諭旨解雇、7懲戒解雇を検討するという
 流れになります。

 繰り返しになりますが、従業員に制裁を与えるには、
 就業規則に記載のある事由に対して、記載のある処分、手続きをする必要があります。

 この機会に就業規則の懲戒条項を確認されることをお勧めします。

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